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平昌五輪 負の遺産 負のレガシー レガシー 競技場 開催経費 平昌オリンピック

2022年01月20日 19時21分36秒 | 平昌冬季五輪
冬季五輪の“宿命”
“負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪


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平昌冬季五輪開会式 聖火を点灯するキム・ヨナ 出典 POCOG


平昌五輪開会式 出典 POCOG

三度目の挑戦で成功 平昌冬季五輪
 首都ソウルから東に約130キロ、韓国の北東部に位置する平昌は、2003年大会と2007年大会に立候補したが失敗し、2011年大会にようやく悲願の冬季五輪の誘致に成功した。
 平昌が属する江原道(Gangwon-do)は、日本でも大人気となった、“韓ドラ”のシンボルと、「冬のソナタ」の撮影地になったことで知られている。
 平昌は、太白山脈の山岳地帯に位置し、標高は800メートル、ジャガイモやソバの畑が広がる豊かな自然に包まれた地域で、冬は韓国内で有数のスキーリゾート地として知れれていて、各地から観光客が訪れる。わずか約80キロで北朝鮮の国境と接している町だ。
 この地域は韓国で最も寒い地域の一つとされ、真冬は零下10度を超え、山脈を下る強い北風が吹きまくる厳しい自然条件を抱えた地域として知られている。
 シベリアや中国東北地域の東北平原から吹き付ける風の影響も受けるため、体感温度は気温よりはるかに寒い。
 強風の日は、体感する寒さは激しく、施設によっては、選手や観客は零下25~30度ぐらいに感じるとされている。また、五輪期間中は平均より降雪が少ないと予想されており、たまに雪が降っても全体的には乾燥した状態が続くしている。
 2017年12月にオリンピック・スタジアムで行われたコンサートを見ていた観客6人が低体温症で治療を受けた。あまりの寒さのため、トイレでうずくまっていた観客も複数いたという。
 このため、2月9日に開催された開会式は、4万人を上回る観客の一人一人にカイロ、毛布、温熱座布団、ポンチョが配られた。また、暖房付き避難所18カ所、大型ヒーター40基、風よけが設置された。
 平昌は、ソウルからは高速バスで約3時間、2017年末には仁川(Incheon)国際空港と競技会場エリアを2時間以内で結ぶ高速鉄道(KTX)を開通した。
 韓国政府は、平昌を冬期五輪の開催地に選んだ理由について、韓国内で最も開発が遅れているとされているこの地域を再開発して、地域振興を図るためだとしている。
 平昌五輪の開催で、韓国では、1988年のソウルで開催された夏季五輪に引き続き、二回目の五輪開催となる。五輪大会は、2018年平昌冬季五輪、2020年の東京夏季五輪、2022年の北京冬季五輪と三回連続でアジアで開催することになっている。
 韓国では、最も人気のあるスポーツは、伝統的にサッカーや野球だが、冬季スポーツではスケートが最も盛んである。ソチ五輪大会では、金メダル3、銀メダル2、銅メダル2をスピード・スケートやショート・トラック、フィギア・スケートの競技で獲得している。
平昌五輪は、2018年2月9日から25日の17日間に渡って、冬季五輪では過去最多の92カ国・地域から2900人の選手が参加し、これも過去最多の15競技、102種目が行われる。


Introducing PyeongChang2018(New Version) PyeongChang2018
PyeongChang2018/Youtube

Amazing drone footage of PyeongChang 2018 venues
AIPS Media Channel/Youtube




膨張する五輪開催経費
 五輪を開催する都市は、いつも、競技場整備に膨大な経費を投入する。
 平昌冬季五輪も例外ではない。
 平昌冬季五輪では、12か所の競技場とオリンピック・スタジアムとメダル・プラザを建設した。
 開会式や閉会式を開催するオリンピック・スタジアムは、仮設施設にも拘わらず1477億ウォン(約147億円)が支出されることになっている。その内、半額は韓国政府が負担した。
 さらに開会式・閉会式のイベント経費、700億ウォン(約70億円)が加わる。
韓国国内では、オリンピックとパラリンピックの開会式・閉会式など4回のイベントで使用するだけなのに、無駄遣いだという批判が出ている。
 Alpensia ski resortの建設には、約15億ドル(約1兆6600ウォン 約1660億円)が投入された。
 政府や自治体はコスト削減に努めたとしているが、膨れ上がる平昌五輪の施設整備費は強い批判が浴びせされている。

 また平昌五輪組織委員会の予算も破たんの危機に陥った。
 平昌五輪組織委員会は2017年6月、これまでの2兆2000億ウォン(約2200億円)の予算規模では五輪開催が困難として6000億ウォン(約600億円)の追加支援を韓国政府に要請した。

 平昌五輪の開催経費は、首都ソウルから遠く離れた開催地に観客動員のための高速鉄道の建設などを加えたインフラ関連経費も含めると、約14兆ウォン(約1兆4000億円)にも達しているとされている。
2011年に招致に成功した時に立候補ファイルで示した開催経費は、8兆8000ウォン(約8800億円)、5兆ウォン(約5000億円)も膨れ上がっている。
 韓国の市民からは、「残るのは「国民の負担ばかりが膨らむ」「能力もないのになぜ五輪を誘致した」などの批判が沸き上がっている。


平昌オリンピック・スタジアム   出典  PyeongChang2018

自然環境破壊の批判を浴びた旌善アルペン・センター
 平昌冬季五輪の滑降、スーパー大回転などの競技会場となった旌善アルペン・センター(Jeongseon Alpine Centre)は、平昌の南部の山麓を切り開いて新たに建設された。滑降コースは、男子ではスタート地点で標高1370メートル、フニッシュ地点で545メートル、標高差825メートル、距離2852メートル、女子ではスタート地点で1275メートル、フィニッシュ地点で545メートル、標高差730メートル、距離2499メートル、3600人を収容する観客席と2900人の立見席スペースが整備された本格的なアルペン競技場である。
 国際スキー連盟の規定を満たすためには800メートル以上の標高差を備える巨大なスロープが必要だった。
 このアルペン・センターの建設用地は原生林の生い茂る山林保護地域、貴重な原生林を伐採して工事が進められた。建設費は約200億円、巨額の経費が投入された。
 計画が明らかになると、自然保護団体が猛反対を受け、造成面積を減らすなど計画は変更された。コースを、男女別々スタート地点とする「Y字型」コースから、男女同一のコースを滑る「I字型」にしたが、原生林の伐採面積は約78ヘクタールに及んだ。
 大会終了後のレガシープランは、観光・レジャー施設として、周辺の施設と連携させて存続を図る方向で検討中としている。
 しかし、アルペン・センターを存続させる場合は、最大55%を上限とするという規制によって、約半分は取り壊さなければならい。施設の半分がなくなれば、本格的なアルペンコースとしての存続はあり得ないことになる。
 江原道庁は、原状復帰に備えて、樹木の専門家らに意見を聞きながら斜面に生えていた草木の種や土砂などを保存しているが、完全な復元は絶望とされている。
現状復帰工事の規模はまだ検討中としているが、50年以上の時間と約50億円の経費が想定され、現時点では予算のめどもまったく立っていないという。
 旌善アルペン・センターは平昌冬季五輪での“負のレガシー”(負の遺産)の象徴になりそうな可能性が大きい。


旌善アルペン・センター  出典 POCOG

雪不足に悩んだアルペンスキー施設
 あまりに厳しい寒さのせいで、平昌の積雪量余り多くないし、めったに大吹雪にならない。日本の気象庁によると、気温が低くなるにつれて空気中に含むことができる水蒸気量が少なくなり、降水や降雪の量も少なくなるという。
しかも、通常、2月は年間で最も乾燥する時期で、降雪量も少ない。
韓国気象庁によると、五輪期間に当たる2月9~25日の17日間に、1日87センチの大雪が積もった年もあれば、通算積雪量が1センチ未満だった年もあるとしている。過去10年の平均でみると、33・5センチで積雪地帯とはいえない。昨年はわずか7センチで、5日間しか降らなかったとしている。
 回転と大回転が開催される龍平アルペン競技場では、今年になって、標高1458メートルの山頂付近から伸びる五輪コースに天然雪はあまりなかった。昨年は雪不足のため、一部のコースを閉鎖したという。この競技場は、ここ数年は、雪不足に悩まされていたアルペンコースなのである。
アルペンジア・スライディング・センターのクロスカントリー、バイアスロン、ジャンプ競技場やフェニックス・スノーパーク、旌善アルペン・センターも同様に雪不足で、このままでは大会開催も不可能な状態だった。
 五輪組織委員会は、440万ポンド(約6億7000万円)を投じて、250台にも及ぶ人工降雪機を設置し、人工の雪でアルペン競技場を覆う作戦をとった。すべてのアルペン競技場を、人工雪がメインのコースとしたのである。
 人工降雪機は冷却水と圧縮空気を「スノーガン」から発射する設備である。人工雪を作るには、大量の水が必要なため、各競技場には6万~12万トン規模の貯水施設が整備された。
 昨年12月から24時間作業で、人工雪をアルペンコースに降らし続け、圧雪などのコース整備を行った。こうした作業は五輪開幕直前までまで続けられたという。
五 輪組織委員会は龍平アルペン競技場だけで、大会期間中(2月9日から16日間)で東京ドームの約2倍、210万立方メートルの雪が必要と試算した。そこで、70台の人工降雪機を設置し、新たに貯水池も用意し、3カ所のポンプ場から給水して、人工雪を降らし続け、滑降コースを整備した。

 平昌の位置する江原道地域は、もともと、積雪地帯ではない。
 さらに韓国メディアは「韓国気象庁の統計では今後5年間積雪量は減少するばかりだろう」と報じている。
 この地域に新たに建設された競技場を維持するためには、どうしても人工降雪に頼るという宿命を負いそうだ。施設の維持管理経費は更に増えるだろう。
 平昌を五輪開催地に選んだツケを払わされる懸念が生じている。



フェニックス・スノー・パーク(アルペンスキー競技場)の人工降雪機  出典 PyeongChang2018

ゴミ処理場を再生した江陵オリンピックパーク
 江陵コースタル・クラスター(Gangneung Coastal Cluste)は、ゴミ捨て場がある土地を再生して建設された。
 このゴミ捨て場は、敷地面積12万3000平方メートル、84万7000トンの廃棄物の埋め立てが可能で、1987年から2000年まで家庭廃棄物を運び入れていた。2000年に廃棄物の搬入を止めて、この土地の再生工事を実施して、オリンピックパークの緑化エリアとして蘇らせた。オリンピックパークには、雨水を再生利用するシステムやソーラーや地熱を利用したエネルギー・システムが整備された。さらに、5か所の有害物資の除去装置や人工的に自然を再生したビオトープや水辺エリアがスポーツ施設に設置された。
 次世代に向けて、環境対策に力点を置いた施策も取り入れて、平昌冬季五輪のレガシー(遺産)を残そうとする努力も見られる。



江陵コースタル・クラスターのオリンピック・パーク

“負のレガシー”(負の遺産) 懸念深刻
 2018年平昌(PyeonChang)冬季五輪大会後、競技施設の年間維持費は210億49000万ウォン(約21億円)になるという推定が明らかになった。施設運営収入を大幅に上回る施設維持費が必要となり、開催地の江原道や自治体の年間赤字は165億ウォン(約16億5000万円)に達することが分かった。
 平昌に建設されたAlpensia Sliding Centreを大会後も維持するためには、年間31億66000万ウォン(約3億1000万円)がかかるとしている。しかし、この施設で得られる収入は7000万ウォン(約700万円)で、夏季は収入がないし、冬季でも利用客がほとんどなくとされている。この施設を所有していることだけで約30億ウォン(約3億円)近くを負担しなければならない。文化体育観光部の関係者は「スライディングセンターは撤去する方が得策」だとしているとしている。
 江陵市(Gangneung)に位置する関東大学校の中に建てられるアイスホッケー場(Kwandong Hockey Centre)と既存の施設を補修するカーリング場を除けば、新設の五輪施設は、大会後の利用計画がほとんどないとされている。江陵市(Gangneung )に建設された1万席規模のアイスホッケー場は(Gangneung Ice Hockey Centre)は施設維持費だけで29億ウォン(2億9000万円)とされいる。
 平昌五輪も、“負のレガシー”(負の遺産)を抱えるのは必至である。


「負の遺産」に苦しんだ長野市
 冬季五輪施設が「負の遺産」となった前例がある。1998年に冬季五輪を開催した長野市だ。
 長野市は五輪のためスケート会場など6施設を、約1180億円かけて新設した。
その結果、1997年度の市債残高は過去最高の約1900億円に達したが、五輪後は景気が低迷したことが追い打ちをかけて、6施設の近年の利用料などの収入は1億円に満たず、市は毎年、施設の維持管理費に約10億円を支出し続けている。
開催から約20年を経た昨年度(2017年度)に建設費返済はようやく終わった。
しかし、施設が存続する限り、維持管理費や補修費の負担は、施設を解体しない限り永久に続き、“負の遺産”となる。
そのシンボルとなったのは、ボブスレーとリュージュの競技会として、総事業費、約101億円で建設した「スパイラル」である。
五輪後、ナショナルトレーニングセンター(NTC)として活用されたが、コースの氷を製氷する電気代などで、多額の維持費がかかるのが難問である。経費は、国が年1億円、長野市が年1億2千万円を負担して維持してきた。国の補助金は平昌五輪までで、その後は打ち切られる。完成から21年も経ち、大規模修繕も必要となってきた。解体するには、13億円ほどかかりとされ、放置して廃虚にすれば冬季五輪のモニュメントとしのイメージが損なわれる。
製氷やめて、夏季のみの練習施設とすれば長野市の負担は年間2千万円以下と見られている。
「スパイラル」はボブスレーとスケルトンができる国内唯一の施設で、リュージュは72年札幌冬季五輪の練習コースがあるが老朽化が激しい。選手にとっては
競技を続ける上で、唯一の場になっている。しかし、競技人口が150人程度とされ、2015年度の利用者が選手・観客合わせても6千人程度で、収入は年間約700万円といわれている。かといって他に利用が可能な施設ではない
 こうした状況の中で、2017年4月、長野市の加藤久雄市長は、18年度以降、「製氷は休止」を決断した。夏場のトレーニングなどに使えるように施設は、当面は、存続させるとした。
 冬季五輪の施設は、冬期間に利用が限定されている上に、利用者が極めて限定されているため、施設利用料収入が少なく、維持管理経費の負担がどうしても膨大になる。ジャンプ、クロスカントリーはもちろん、アイス・アリーナ、スピード・スケート、ホッケー、カーリングなど競技施設の整備は、大会後の利用計画を慎重に、かつ冷静に見極めることが必須だろう。





長野スパイラル  出典  長野市

冬季五輪の開催に名乗りを上げる都市はいなくなった
 2015年7月31日、マレーシア・クアラルンプールで開いた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、平昌冬季五輪の次の2022年冬季五輪の開催地に北京を選んだ。北京は08年に夏季五輪を開いており、史上初めて夏と冬両方の五輪を開催する都市となる。
 IOC委員による投票の直前に行われた北京の最終プレゼンテーションで、中国の習近平国家主席がビデオメッセージで支援を約束し、豊富な財政力と運営実績を強調し、投票の結果、44票を獲得し、40票のアルマトイ(カザフスタン)に競り勝った。
 しかし、2022年大会の開催地決定までのプロセスは、国際オリンピック委員会(IOC)は、深刻な危機感を与えた。
 2022年大会の招致レースは、本命とされていた欧州のオスロやストックホルムが次々と見送りを表明し脱落した。その理由は、いずれも多額の開催経費に市民が反発したからであった。最終的に立候補した都市は、北京とアルマイトのアジアの2都市しか残らないという異例の事態となっていた。
 厳しい批判にさらされているのは膨張する五輪開催経費である。がとにかく五輪を取り巻く状況は一変しているのである。


平昌冬季五輪の立役者、五輪高速鉄道(KTX)は赤字必至


高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線  出典  PyeongChang 2018 , Olympic News

 平昌冬季五輪開催に合わせて、競技会場エリアとソウルや仁川国際空港と結ぶ路線、韓国高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線(キョンガン)が開通した。
 最速列車、特急「ダリアン」は、首都ソウルから平昌までを、約1時間30分、仁川国際空港から終点の江陵までを約2時間50分で結び、五輪大会の観客や選手、大会関係者の輸送の主役を担う。
 開会式や閉会式が行われるオリンピック・スタジアムや、アルペン競技場、アイススケート競技場は、韓国北東部の江原道(カンウォンド)の平昌や東海岸の江陵(カンヌン)市に立地している。この地域は首都ソウルからの交通の便が悪く、“陸の孤島”とされてきた。高速バスに乗車すると約3時間半、在来線では山岳部を避けて南へ大きく迂回し、海岸線を北上するため5時間以上かかった。日帰りするには難しい地域で、五輪開催にあたって、この地域のアクセスの改善は重要な課題だった。
 韓国政府は、これを解決するために、高速鉄道、KTX(Korea Train eXpress)の建設を決めた。工事は2012年6月に着工し、5年半余りの工期をかけて、2017年12月に完成、ソウルと江陵間が開業した。総事業費、3兆7597億ウォン(約3800億円)が投じられた。
 韓国大統領府関係者は「平昌五輪は冬季五輪では過去最大の国・地域が参加する。最大の五輪を最高の五輪にしようと新線をつくった」と語っている。
 KTX京江線はソウル駅を起点に、約半分の区間は在来線を利用し、万鍾の手前で新たに建設された高速新線に入る。新線の延長区間は約120km、江陵付近の一部のみ単線だが、その他は全線複線で、万鍾、横城、屯内、平昌、珍富(五臺山)、江陵の6駅が新設された。
 珍富(五臺山)駅は、オリンピック・スタジアムやアルペン、ジャンプ、スノーボードの競技場の最寄り駅で、江陵駅の近くには、アイスアリーナ、スピードスケート場、ホッケー場がある。大会開催期間中は、江陵駅は1日、2万人余りの乗降客でにぎわったという。
2018年1月18日には、仁川国際空港第2ターミナルにKTXの駅が完成し、仁川国際空港から江陵までの全長277.91kmが開通し、韓国で初めて東西を結ぶ高速鉄道が整備された。
2月1日からは仁川国際空港駅発が16本、ソウル駅発が10本など1日に上下各51本の列車を運行し、片道約4万人の旅客輸送が可能になるという。
 運賃は、ソウル―江陵間は一般席で2万7600ウォン(約2800円)、仁川空港からでも4万700ウォン(約4700円)で、駅から各競技場へのシャトルバスにも乗車できる。
 運行車両は、2009年より導入された現代ロテム社製の「KTX ―山川」(サンチョン)の改良形で、10両編成の列車が15編成投入された。最高時速250kmで運転する。
 韓国の高速鉄道は、フランスのTGVの技術を導入して整備された。


平昌・江陵への交通アクセス  出典 POCOG


高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線  出典  PyeongChang 2018 , Olympic News

 五輪大会開催中はKTXは大混雑して、列車によっては満員で乗り切れない乗客も現れたという。しかし、五輪終了後はどうなるか、誰もが懸念を抱く。
 KTX京江線の最大の問題点は、沿線人口の少ないことだ。このエリアの最大の都市、江陵市の人口は21万人、平昌郡はわずか4万人、スキーリゾートの山岳の街である。沿線一帯には、大企業の立地もなく主要な産業は見当たらない。しかも海岸部の江陵が終点で、延伸計画もなく、乗客増も見込めない。ちなみに長野冬季五輪で建設した長野新幹線は、北陸まで延伸され、乗客増につながっている。
それでも地元では、高速鉄道の開通を起爆剤にして、これまで韓国国内で最も開発が遅れていた江原道エリアの地域振興に結びつけたいと期待を寄せる。
 しかし、五輪開催のために3兆7597億ウォンという巨費を投じた高速鉄道、赤字路線に転落するのは必至だろう。
 KTXを運行するKORAILの負債が6兆7000億ウォン(約6700億円)にも達し、KTXの施設管理を行う鉄道施設公団の負債約6兆6000億ウォン(約6600億円)とあわせると約13兆3000億ウォン(約1兆3000億円)もの巨額負債を抱えているという。KTXは、建設工事の度重なる延期とそれに伴う事業費の高騰で、建設費が膨れ上がり、今後30年後は黒字化が不可能という予測もされている。
 高速鉄道KTXは「負の遺産」の象徴になりそうだ。


平昌冬季五輪後の競技施設のレガシー・プラニング
 平昌五輪開催地は、大会終了のレガシー・プラン、施設利用計画の概要を明らかにしている。スキーやスケート競技の国内大会や国際大会の開催、練習場、レジャー施設などとして利用する。選手村は、民間企業に売却してリゾートマンションなどとして販売される予定だ。
 しかし、3つの競技場は、未だに大会後の利用計画たてられないままでいる。
 利用計画が決まったにしても、一体、年間何回の競技会が開催され、施設の利用客がどれくらい訪れるのか見通しは明るくない。
 氷点下10度に達する厳しい寒さと激しい北風に包まれるこのエリアの自然条件は、冬期リゾートとして振興させるにはネックとなるだろう。
 平昌五輪で整備された壮大な競技施設の維持・運営経費、補修費は、膨大に上り、長期間に渡って地元自治体の財政を圧迫するのは必至である。
 厳しい寒さ覆われる中で、誰もいないゲレンデや競技コースが、寂しく林立する光景が目に見えている。




平昌五輪競技場・施設の利用計画
出典 POCOG / Architecture of the Games PyeongChang2018 / 東亜日報

準備完了 平昌冬季五輪五輪会場 YTN NEWS
YTN/Youtube

空から見た平昌冬季五輪会場 KBS NEWS
KBC/Youtube

The Buildings of the Winter Olympics: PyeongChang 2018
B1M/Youtube


平昌マウンテン・クラスター(PyeongChang Mountain Cluster:ピョンチャン・マウンテン・クラスター)



平昌オリンピック・パーク   出典 POCOG


PyeongChang Olympic Stadium(平昌オリンピック・スタジアム)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: PyeongChang Olympic Plaza
Olympic Games: Opening and Closing ceremonies
Paralympic Games: Opening and Closing ceremonies
Type: Temporary
Built: 2017
Capacity: 35,000 Seats
建設費:1477億ウォン(約147億円)
五輪後の利用計画:オリンピック・メモリアル・ホール


平昌オリンピック・スタジアムで行われた開会式  出典 IOC


PyeongChang Medal Plaza(平昌メダル・プラザ)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: PyeongChang Olympic Plaza
Olympic Games: Medal ceremonies
Paralympic Games: Medal ceremonies
Type: Temporary
Built: 2017
Size: 1,267 square meters


平昌メダル・プラザ  出典 IOC


Alpensia Ski Jumping Centre(アルペンジア・スキージャンプ・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Ski Jumping, Nordic Combined, Snowboard (Big Air)
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 2009
Renovated: 2015-2017
Capacity: 11,000 Seats + 2,500 Standing
Slopes for Competitions: LH (125m), NH (98m)
Slopes for Practice: K60, K35, K15
五輪大会後の利用計画:国内大会、国際大会などのスポーツイベントの開催 国内の選手のトレーニング施設 公共レジャー施設 観光やイベント開催施設
五輪後の運営:




Alpensia Sliding Centre(アルペンジア・スライディング・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Bobsleigh, Skeleton, Luge
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2013-2017
Capacity: 1,000 Seats + 6,000 Standing
Course Length: 1,376.38m (Bobsleigh / Skeleton) / 1,344.08m (Luge Men) / 1,201.82m (Luge Women / Double)
Altitude Difference: 116.32m (Bobsleigh / Skeleton) / 117.12m (Luge Men) / 95.62m (Luge Women / Double)
Average Slope: 9.48% (Bobsleigh / Skeleton) / 9.69% (Luge Men) / 8.97% (Luge Women / Double)
建設費:1144億ウォン(約114億円)

五輪後の利用計画:国内・海外の選手のトレーニング施設 カリキュラムと連動した学生のスポーツ体験施設、観光やレジャー目的の体験施設
五輪後の運営:韓国国立スポーツ大学



PyeongChang 2018 Sliding Center
PyeongChang2018/Youtube


Alpensia Cross-Country Centre(アルペンジア・クロスカントリー・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Cross-Country Skiing, Nordic Combined
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2009, 2015-2017
Capacity: 4,500 Seats + 3,000 Standing
Course length: 3.75km / 3.3km / 2.5km / 2km
Course Width: 8m
Altitude Difference: 54m (751m~805m)

五輪大会後の利用計画:国内大会、国際大会などのスポーツイベントの開催 国内の選手のトレーニング施設 公共レジャー施設 観光やイベント開催施設
五輪後の運営:江原道開発公社



Ready to Go! #Alpensia Cross-Country Skiing Centre / Alpensia Biathlon Centre
IOC/Youtube

Alpensia Biathlon Centre(アルペンジア・バイアスロン・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Biathlon
Paralympic sports: Para Biathlon, Para Cross-Country Skiing
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2007, 2015-2017
Capacity: 4,500 Seats + 3,000 Standing
Course length: 4km / 3.3km / 3km / 2.5km / 2km / 1.5km
Course Width: 8m
Altitude Difference: 47m (749m~796m)
Shooting Range: 82.5 × 50m

五輪大会後の利用計画:国内大会、国際大会などのスポーツイベントの開催 国内の選手のトレーニング施設 公共レジャー施設 観光やイベント開催施設
五輪後の運営:江原道開発公社



Alpensia Biathlon Centre | Venues at the PyeongChang 2018
IOC/Youtube


Phoenix Snow Park (P,C)(Bokwang Snow Park:フェニックス スノーパーク:普光スノーパーク)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Freestyle Skiing, Snowboard
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1995
Renovated: 2015-2017
Capacity: 10,200 Seats + 7,800 Standing

五輪後の利用計画:既存の他のコースと補完・共存する付属施設 難易度に合わせて一般に開放
五輪後の運営:フェニックス・スノーパーク







Ready to Go! #Phoenix Snow Park
PyeongChang2018


Yongpyong Alpine Centre(ヨンピョン・アルペン・センター:龍平リゾート)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Alpine Skiing (Slalom & Giant Slalom)
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2016-2017
Capacity: 2,500 Seats + 3,500 Standing

五輪後の利用計画:スキー・リゾート施設 他の施設の付属施設
五輪後の運営:龍平リゾート 




Jeongseon Alpine Centre(チョンソン・アルペン・センター:旌善アルペン・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Alpine Skiing (Downhill, Super G & Combined)
Paralympic sports: Para Alpine Skiing, Para Snowboard
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 3,600 Seats + 2,900 Standing

建設費:2064億ウォン(約206億円)
五輪後の利用計画:観光レジャー施設(検討中) 環境アセスメントを実施し55%以上を自然林に戻すことを検討
五輪後の運営:検討中



Jeongseon Alpine Centre | PyeongChang 2018 Games
PyeongChang2018



江陵コースタル・クラスター(Gangneung Coastal Cluster:カンヌン・コースタル・クラスター)







Gangneung Hockey Centre(カンヌン・ホッケー・センター:江陵ホッケー・センター)

Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Ice Hockey
Paralympic sports: Ice Sledge Hockey
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 10,000

建設費:1123億ウォン(約112億円)
五輪後の利用計画:大会開催・練習施設 文化イベント・コンサートホール施設
五輪後の運営:検討中




Gangneung Oval(カンヌン・オーバル:江陵オーバル)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Speed Skating
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 8,000

建設費:1324億ウォン(約133億円)
五輪後の利用計画:検討中(国内選手の練習場)
五輪後の運営:検討中




Gangneung Ice Arena(カンヌン・アイス・アリーナ 江陵アイス・アリーナ)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Short Track Speed Skating, Figure Skating
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2016
Capacity: 12,000

建設費:1340億ウォン(約134億円)
五輪後の利用計画:公共スポーツ施設 多機能施設(文化イベント スポーツセンター スイミングプール)
五輪後の運営:江陵市




Gangneung Curling Centre(カンヌン・カーリング・センター:江陵カーリング・センター)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Curling
Paralympic sports: Wheelchair Curling
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2015-2017
Capacity: 3,500

五輪後の利用計画:多用目的スポーツセンター ユース・クラブ・センター
五輪後の運営:江陵市


Kwandong Hockey Centre(クァンドン・ホッケー・センター:関東ホッケー・センター)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: –
Olympic sports: Ice Hockey
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 6,000

建設費:627億ウォン(約63億円)
五輪後の利用計画:カトリック関東大学校の教授オフイスやレクチャールーム 多目的スポーツやレジャー施設
五輪後の運営:カトリック関東大学校




その他の施設の利用計画

平昌選手村(PyeongChang Olympic & Paralympic Village)
五輪後の利用計画:民間企業に住居として売却 2018年内に入居開始
売却先:龍平リゾート




江陵選手村(Gangneung Olympic & Paralympic Village)
五輪後の利用計画:民間企業に住居として売却 2018年内に入居開始
売却先:韓国土地建物不動産




江陵メディア・ホテル(Gangneung Media Village)
五輪後の利用計画:民間企業に売却 2018年内に入居開始
売却先:韓国土地建物不動産








★ 2018平昌冬季五輪
平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
平昌冬季五輪 競技場の全貌 最新情報
平昌冬季五輪 NBCは2400時間以上の五輪番組を放送
平昌冬季五輪 4Kに乗り出したNBC
視聴率低下に歯止めがかからなかったNBCの平昌冬季五輪中継
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~
冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪
“陸の孤島”解消の主役、五輪高速鉄道(KTX)は赤字必至

★ レガシー(未来への遺産) 負の遺産
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?
冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪
ロンドン五輪 東京五輪への教訓 ~周到に準備されたロンドン五輪レガシー戦略~~
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?
“迷走”海の森水上競技場 深刻“負の遺産”





国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2018年2月11日
Copyright (C) 2018 IMSSR



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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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